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「neo SHIBUYA」が目指すべきまちのかたちとは? HELLO neo SHIBUYAトーク vol.1 「渋谷 vs neo SHIBUYA」@渋谷駅東口地下広場 レポート

2019年11月1日の渋谷駅東口地下広場(以下、東口地下広場)オープンを記念し、10月30日にオープニングセレモニーや内覧会と合わせてトークイベントを開催しました。 みんなが創り、みんなが参加し、みんなで盛り上げる「まちびらき」を掲げるなかで、登壇者が語るneo SHIBUYA像をレポートします。

イベント概要
 
開催日時:
2019年10月30日(水)14:30~16:00
 
開催場所:
渋谷駅東口地下広場
 
登壇者:
宇野常寛氏(評論家・PLANETS編集長)
太田佳代子氏(建築キュレーター)
田中伸和氏(UR都市機構 東日本都市再生本部長)
東浦亮典氏(一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメント代表理事)
 
MC:
得能絵理子氏(スターハウスジャパン代表取締役)
 

「渋谷で何ができるのか」を考える
 
さかのぼることおよそ1年前の2018年9月、全国エリマネ*シンポジウム@渋谷ヒカリエが開催され、宇野氏がコーディネーターを務めたトークセッションにおいて、次の3つの論点が挙げられていました。
 
●東京というまち全体の都市間の関係性の中での渋谷の役割とは?
●渋谷は今どうなっているのか?
●今の渋谷だからこそできる面白いこととは?

 
今回のトークイベントの冒頭で、宇野氏がこれらの論点を紹介し、
「新しい生活の場になっている渋谷。働く場になっている渋谷。遊ぶ場になっている渋谷。一つのモデルケースとなっていく渋谷で何ができるのかを、渋谷の巨大再開発がひと段落ついたこのタイミングで再度議論したい。」と提起しました。
 
*全国エリアマネジメントネットワーク
全国にあるエリアマネジメント組織間の情報共有や政策提案等を目的として2016年に発足した団体。一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメントは当団体設立以来、会員となっている。
https://areamanagementnetwork.jp/

 
「neo SHIBUYA」への期待
 
タイトルにもなっている「HELLO neo SHIBUYA」に基づき、各登壇者がこれからの渋谷に期待するメッセージを発表。

 
 


 
 

「屋内化する街をとことん面白く!」

 
建築キュレータ―である太田氏は、再開発によりこれまでにないスケールで「今まで路上だったところや、ビルとビルとの間の隙間の空間、陰になったエリア、あるいは見えないけれど人知れず面白いところ、変なことが起こりそうでワクワクする場所、そういったものが全部大きな一つの建物の中に集約される」ことを「屋内化」と表現。その上で、「今までのストリート、あるいは古い界隈にあった『味』に対抗するくらいの屋内空間なりの面白さをどうやって作っていくのかが、我々のこれから楽しんでいくべきチャレンジポイントかなと思います。」と前向きな課題として提示しました。

 
 

「オヤジもワクワク!?」

 
UR都市機構 東日本都市再生本部長である田中氏は、「これから私自身が本当にワクワク、ドキドキできるようなまちになってほしいし、そういうまちにしていきたい」と表明。そのためには、「まちなかの何だか面白そうなところに目を付けた人が何かを始めると、少しずつ界隈性ができ、そこにさらに人が集まり、盛り上がっていくというスパイラル」を作っていくことが必要と語りました。

 
 

「地下で何しよう?」

 
渋谷駅前エリアマネジメント代表理事の東浦氏は、実際に東口地下広場でカフェ等の賑わい施設の運営やこのトークイベントの実施は、一つ一つ、公共セクターの方々との協議や調整の結果として実現していること、公共空間の常としての制限を官民連携により解決してきた経緯を明かしました。だからこそ、「渋谷はいろいろな方が関わっていて、最終的に見たい姿、都市の暮らし方、都市の在り方については議論し、共有して、みんなの知恵でなるべくそういう空間になるように持っていければ」との思いで、『地下で何しよう?』と投げかけていました。

 
 

「サブカルチャーからライフスタイルへ」

 
評論家・PLANETS編集長の宇野氏は、「大丸有にも六本木・虎ノ門にもできないことをやろう」、「もはや渋谷は若者のまちではない」と述べたうえで、今後渋谷が担うべき役割を提言。「日本全体が急速に老いていっているなかで、それをただネガティブに捉えるのではなく、若い頃、渋谷で遊んでいた僕らよりもちょっと上の世代が、新しいライフスタイルを作っていくこと」が渋谷に求められており、「戦後の高度成長からバブル経済を支えた東京西側の住宅地と、南部のいわゆる東京の政治・経済の中心地との結節点」である渋谷が、「新しい職住接近のモデルタウンとして、渋谷というか、渋谷圏が新しいライフスタイルを発信していける場所になるといい」と語りました。

 
 
渋谷の多様性とは
 
渋谷のまちをテーマにハーバード大学の大学院生との共著**を執筆した太田氏は、彼らとのやり取りのなかで出てきた「このまちでは何が起こるか分からない」、「何が起こっても不思議ではない」といった感想に注目しています。
田中氏は、渋谷が多様な人々を受け入れやすいのは、「ただ多種多様な箱があるのではなく、外に向かって発信できる居場所があるからだ」と分析。
続いて東浦氏が、「ただ消費をしにまちに来るだけではなく、表現をするとか、何か自分が制作に関わるとか、そんなことがこれからのまちとの関わりの一つになってくる」と述べ、そういったイノベーションやクリエーションが起こりやすい、渋谷の多様性について触れました。
宇野氏は、インターネットが普及している現代、「人は最初から分かっている欲望にしか接続しなくなっていく」ため、「あえて猥雑なものを残すとか、本来すごくフォーマルなものの中に猥雑なものを混ぜ込んでいくとか、たぶんそういった設計主義の発想に立たないと、逆に多様性が担保できなくなってくる」という点を指摘。
 
**「SHIBUYA! ハーバード大学院生が10年後の渋谷を考える」(2019.4 CCCメディアハウス刊行)

 
 
みんなでつくる「neo SHIBUYA」
 
渋谷が、このまちの特異性の一つである「有象無象が混在できる状況」であり続けるためには、「これまでの渋谷」を大事に残すというよりも、新旧のヒト・モノ・コトをインタラクションさせつつ、みんながそれぞれに面白い状態をいかに伸ばしていけるか、が課題として挙がりました。
東浦氏は、「オフィスワーカーが数万人規模で増えてくる今の渋谷だからこそ、物理的だけでなく、まちに関わっていって欲しい」と期待を寄せました。
宇野氏は、その有機的な連動を生み出す意味でも、「渋谷圏で考える、職住を本当に近接で考えるというのは、オンとオフを分けない」、「Door to Doorで30分か1時間弱で行ける距離のところに、いい意味で何でもできてしまう空間」を作り上げることで新しいライフスタイルが生み出されていくと見解を述べました。
最後は、「アフター2020というのは、もう一回繋ぎ直す、点ではなく線と面で考えていく東京になっていけばいいと思うし、渋谷がその起点になってくれたらいいなとあらためて思います」と、宇野氏が今後の渋谷の在り方を示唆し、トークイベントは終了しました。
 
今回のトークイベントでは、MC得能さんのリードで登壇者と参加者の掛け合いが多く見受けられました。この盛り上がりも、官民連携により育てていく東口地下広場、延いては、neo SHIBUYAの活力の象徴とも言えるのではないでしょうか。